走査線加工と等高線加工:使い分け
カッタパスには下図に示すように、エンドミルが上下に動く走査線加工と、水平面内で形状加工を行いそれを順次上下方向に連ねる等高線加工があります。
走査線加工と等高線加工の使い分けとしては、等高線加工は水平面内で加工を行うので切削抵抗の変動を一定に保ちやすく走査線加工より有利であると目安があります。ただし、切削点が一点に集中するので、その部分の摩耗が大きくなる欠点があります。
走査線加工
等高線加工
走査線加工と等高線加工:走査線加工
走査線加工は引き上げ加工と押し下げ加工がありますが、下図のように押し下げ加工は切削速度の遅い切れ刃部中心部近くで切りくず厚みが最大となるため、エンドミルに異常損傷が生じることがあります。
引き上げ加工
押し下げ加工
切削速度の速い切れ刃部において、切りくず厚みが最大となる。
工具に異常損傷が生じにくい
切削速度の遅い切れ刃中心部近傍において、切りくず厚みが最大となる。
工具に異常損傷が生じやすい。
走査線加工と等高線加工:等高線加工
等高線加工は、下図に示すように軸方向に一定の切込み量で上から下に切込んでいくため、刃先部だけが摩耗します。刃先だけが摩耗することを防ぐ対策としては、下図に示すようにはじめに大きく切込んで切れ刃全体を使う荒加工を行い、次に仕上げ加工を行う方法があります。これを一発大荒加工と等高線かけ上がり加工と呼びます。この加工方法を行うと工具交換の間隔が長くなり、荒削り加工の能率が上がりますので加工時間を短縮できます。
ランピング加工
刃先交換式エンドミルは底刃中心に切れ刃のないものが多く、このエンドミルでポケット加工するときには、垂直方向に切り込めないので斜め方向に掘り込んでいきます。この加工をランピング加工といいます。これにより、1本の工具でポケット加工できるようになり、工具集約と加工時間短縮ができます。
ランピング加工を行うエンドミルは、さらい刃の内側に加工できる副切れ刃が必要であり、それがないエンドミルではできません。斜めに切込む角度の最大値は、副切れ刃の最内部と体格側のさらい刃の最内部を結んだ線が水平線となす角であり、最大ランピング角と呼びます。
最大ランピング角
ランピング角
最大ランピング角
リブ溝加工:リブ
リブとは薄肉の成形品の補強部のことであり、下図に示す形状をしています。これを加工する金型は従来放電加工*で作りましたが、電極を製作する必要があり、また加工時間も長くかかるため、エンドミルによる切削加工に置き換えることにより加工時間を短縮できる場合があります。
リブ
リブ溝加工:リブ溝の種類
しかし、エンドミルによるリブ溝加工は、細くて長いエンドミルを使用しなければならず、エンドミルのたわみやビビリも発生しやすく、良好な仕上げ面が得られにくい傾向があります。
リブ溝の種類
通しリブ
止まりリブ
トロコイド加工とヘリカル加工:
通常の溝加工とトロコイド加工による溝加工
トロコイド加工は、図に示すように円弧状ののカッタパスを繰り返し加工部に入れていく加工法であり、その動きは厳密なトロコイド曲線ではありませんが、それに近い動きをすることからトロコイド加工と呼びます。
通常の溝加工はエンドミルと同じ直径の溝幅を加工するため、被削材との接触長さが長くなり、切削負荷が大きくなります。これに対してトロコイド加工は接触長さは短くなるので切削負荷が小さくなり、高速切削が可能となります。
トロコイド加工とヘリカル加工:
トロコイド加工によるポケット加工
トロコイド加工は図のようにポケット加工でも使われます。
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トロコイド加工とヘリカル加工:
ヘリカル加工による穴あけ加工
ヘリカル加工は、図に示すようにエンドミルをらせん状に動かして穴をあける加工法であり、エンドミルを縦送りする加工よりも切削負荷が少なくなるので切削抵抗が減り、切りくずを細かく分断するため高速切削が可能となります。ドリル加工より加工能率が落ちますが、縦送りの方向のピックフィードが小さく切削抵抗が小さくなるの高精度の穴を加工できます。また同一工具で異なる直径の穴を加工できるので工具集約できます。
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ヘリカル加工による穴あけ
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走査線加工と等高線加工
リブ溝加工:
トロコイド加工とヘリカル加工: