焼もどしは、焼入れして硬くもろくなった鋼を使いやすくするために、加熱して空冷(もしくは急冷)する操作です。焼もどしは、以下の工程で行われます。
再加熱(A1点以下の温度)
焼入れした鋼を徐々にA1点以下の温度に再加熱します。
加熱保持(一定時間)
鋼をA1以下の温度で加熱保持します。マルテンサイト中の炭素原子を拡散させ、フェライトとセメンタイト (Fe3C)を形成します。
焼もどしによるメリット
- もろさが取り除かれる
- 展延性の改善
- 靱性の改善
- 安定した組織にする
焼もどしの温度を低温にすると、硬さの低下を抑えることができます。
- リンクをクリックしてさらに学習しましょう!
= 粘りをプラス
引張り強さと降伏強さ
グラフは、焼ならし鋼の引張り強さ(σTS) と降伏強さ(σY)を示しています。下のリンクをクリックすると、焼入れ・焼もどし鋼との引張り強さと降伏強さにおける違いを確認することができます。焼ならしを行うと、オーステナイト中の飽和炭素が拡散され、Fe(フェライト)Fe3C(セメンタイト)が生成されます。これによって、非平衡状態が開放され、鋼の強度が増します。
高温焼もどし
グラフに示すように、焼もどしの際の加熱温度が高すぎるとFe3C粒子が粗大化し、鋼の硬度が大幅に低下します。
3つの組織図は過飽和の炭素がはき出されて、小さな炭化物(セメンタイト)をつくりやがてそれが粗大化する様子を示しています。このセメンタイトの粒子が組織中に確認できる状態をソルバイトと呼んでいます。
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