M系列には、ステンレス鋼と耐熱鋼が含まれます。切りくずはのこ刃形やせん断形よ呼ばれる切りくずが生成され、切りくずが破断されるときに大きな衝撃が生じます。
ステンレス鋼は、一般にネバい、加工硬化が高い、熱伝導率が低い、というのが特徴です。
M系列材料の被削性
そのためステンレス鋼の被削性には、切削抵抗が高い、切削熱が高くなるといった点が挙げられます。このような被削性を持つステンレス鋼を切削すると、チッピングやすくい面摩耗などの工具損傷が顕著にみられます。ステンレス鋼は、工具材種との親和性も高いので、切れ刃に溶着がみられたり、すくい面摩耗が非常に大きく発達する場合もあります。また、切削熱による酸化損傷や、加工硬化層をこすることによる切込み境界損傷がみられるのも、ステンレス鋼を切削する際に工具にみられる代表的な損傷形態です。この切込み境界損傷は、加工面のバリを発生させる要因にもなります。
M系列の加工物例:
エンジン用バルブ
M系列の被削材に適した工具選択
M系列の被削材を切削する際は、切れ味を良くした工具を選び、切削温度の上昇を防いだり、熱に強い工具材料を選んで、熱による損傷を抑えたりする必要があります。また、切込み境界部の損傷や加工面のバリを防ぐためには、すくい角の大きな刃形を選ぶと良いと考えます。すくい角を大きくすれば、切れ味も良くなりますので、切削抵抗や切削温度を下げる役割も果たします。
のこ刃形の切りくずが出るM系列の被削材は、切りくずが破断する際には大きな衝撃が生じるため、刃先強度も工具を選ぶときに考慮しなければなりません。また、以前は切削抵抗が上がるのを嫌って、無理に切りくずを分断させることのないチップブレーカが選ばれていましたが、近年では、ネアネットシェイプ*化の影響で切削加工時の取り代が少なくなり、切りくずが長く延びる加工が増えてきたため、切りくずの処理も重要な要素として考えられるようになっています。
ステンレス鋼の種類
ステンレス鋼は、その組成や特徴によってさまざまな種類に分類されます。
合金元素。組織で分類するのが一般的な分け方で、オーステナイト系、フェライト系、マルテンサイト系の3つと。そこから派生した2相系、析出硬化系の2つ、合わせて5つに大きく分けられています。
一般的には、ステンレス鋼の中では引張り強さの高い析出硬化系が最も被削性が悪く、ネバいNiを加えた2相系、オーステナイト系が、それに次いで削りにくい材料といわれています。マルテンサイト系やフェライト系は一般鋼と比較しても、それほど削りにくい材料ではありません。また、同じ系統のステンレス鋼の中では、含炭素りょうが多いほど削りやすくなると考えられています。
耐熱鋼
耐熱鋼は、ステンレス鋼に対して、Niなどの耐熱性の高い元素の含有量を増した材料ですから、より熱伝導率が低く、切削熱に注意する必要があります。Niなどの合金元素の含有量が50%を超える組成の場合、材料は耐熱合金や超合金と呼ばれるようになり、M系列ではなく、S系列に分類されます。
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