ひとくちにN系列の被削材といっても、鉄以外のほとんど全てを指すことになりますから、その種類は非常に多岐にわたります。ここでは、N系列の被削材のなかでも、切削加工されることが多いいくつかの被削材を代表として挙げて説明いたします。
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N系列の被削性
工具選択
N系列の被削材は、これまで列挙してきた他にもさまざまな種類の材料が属しているため、N系列全ての被削材に対して適用できる工具を選択するのは困難です。
一般には、仕上げ面性状を要求される被削材が多く、切削抵抗の低い工具を選択しますが、被削材と工具材料との相性を良く考えないと上手く切削できません。
アルミニウム/アルミニウム合金
純アルミニウムとアルミニウム合金は、被削材として一括に考えられることが多いのですが、被削性という観点から考えると、特徴に少々違いがあります。
両者の最も顕著な違いは、組織中に硬質粒子を含む良です。アルミニウムは非常に軽量で軟らかく、展延性に富んだ金属ですので、あらゆる形状に加工して使用することが可能ですが、強度がないために、さまざまな合金元素を加えてその強度を補うことが重要です。このとき、Al(原子量=26.99)とほぼ同等の原子量であるSi(シリコン、ケイ素:原子量=28.09)が、添加元素として利用されます。
Siは、アルミニウム素材の中で強度・硬度を補強するのに非常に効果的ですが、自身が硬質の粒子となって組織中に存在するため、多量に添加すると硬質粒子の含有量が増えることになり、被削性が著しく悪くなります。
アルミニウムに加える合金元素には、Siの他にCuやMg、Znなどもあります。
硬質粒子の影響が少ない純アルミを切削加工する場合、問題となるのが切りくずの処理と用着による仕上げ面の荒れです。非常に軟らかく展延性に富みますので、切りくずが延びやすい上に仕上げ面に傷がつきやすい材料といえます。
マグネシウム/マグネシウム合金
マグネシウムはアルミよりも軽量な金属で(Mg:原子量=24.31)、ある程度の強度を持っていることから、航空機の構造材などに用いられています。
非常に酸素や水と反応しやすく、しかも反応中は激しい発火を伴います。切りくずを放置しておくと空気中の酸素や水分と反応して危険なため、多量の水溶性切削油材を使用し水と反応させながら加工することで、切りくずを残さないというか恒例があります。しかし、このときは反応により水素ガスが発生しますので、十分に換気をしながら加工しなければなりません。
銅/銅合金
銅は非常に電気伝導性*が高い金属で、電気関連の部品によく使用されます。コンピューターのプリント基板の材料として用いられます。
アルミニウムと比較すると決して軽量ではありませんが、軟らかく展延性に富んでいるため、溶着などを生じ仕上げ面が悪くなりやすい材料です。また、軟らかい上に重いという特性から、片持ちで加工する際には、たわまないように注意しなければなりません。
グラファイト(黒鉛)
グラファイトは非常にもろいのですが、砕けた後の細かい粒子によって、工具にこすり摩耗が発生します。また、可燃性の物質ですので、切削熱にも十分注意が必要です。
木材
木材は金属などと比較すると、非常に軟らかく剛性もないため、たわんだり、振動が起きたりすると、すぐに仕上げ面に影響が現れます。
また、高速で削らなくても、切削熱の影響で簡単に燃えたり、焦げたりしやすいのですが、湿式での切削には向きませんので、十分注意しながら切削しなければなりません。
GRP, FRP
グラスファイバー強化プラスチック素材、ファイバー強化プラスチック素材のことです。
硬質の強化繊維が入っているため、むしれたような加工面になります。
ポリ塩化ビニル (PVC)
ポリ塩化ビニルは、切削熱で容易に溶け、刃先に溶着を起こします。
また、もともと軟らかい上に、パイプ材として使われることも多いため、切削加工する際に剛性がない場合が多いのが特徴です。
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