HISTORY OF MITSUBISHI vol.9

マテリアルの森

ゾーニングで公益的機能を最大限発揮し地域や社会へ貢献

マテリアルの森

 前身の三菱商会が吉岡山林を取得したのが明治6年。それから社有林を取得し続け、三菱マテリアルは北海道を中心に全国で1.4万haもの森林を保有する大規模森林所有者となりました。元々は鉱山や炭鉱の坑道を支える坑木を供給するために森林を保有していましたが、国内に鉱山や炭鉱がなくなったことから、社有林の役割は時代の流れとともに大きく変化してきました。今号では、歴史からは少し離れ、三菱マテリアルの社有林「マテリアルの森」で行われていることや、森林の役割について触れていこうと思います。

森林の公益的機能の発揮のために

 森林には多くの公益的機能があります。木材の生産をはじめ、二酸化炭素の吸収による地球環境の保全や、生物多様性の保全、土砂災害防止、水源かん養などの機能が森林には備わっています。ただ、この公益的機能を十分に発揮するには、森の状態を調べ、適切に管理しなければなりません。

 三菱マテリアルは社有林を全国に保有しているため、区域ごとに立地や環境条件はさまざまであり、求められる機能も異なります。そこで三菱マテリアルでは、社有林を4つの区域に分け(ゾーニング)、それぞれの区域で高めるべき機能とその管理方法を明確化させ、管理しています。

マテリアルの森の適切な管理とは

三菱マテリアルでは社有林を以下の4つにゾーニングして森林管理を実施しています。
①木材資源の生産やCO2固定機能などの公益的機能を高める資源循環利用区域
②天然生林を維持しつつ生物多様性の保全を主目的とした水土・生態系保全区域
③レクリエーションや自然体験活動の場として活用するための保健文化利用区域
④天然生林により、各種公益的機能を高めていく天然生林択伐利用区域

 こうしたゾーニングにより、区域ごとに求められる機能を最大化できるよう森林管理方針を定めており、「マテリアルの森が日本の森をリードする」をスローガンとして、機能豊かな美しい森林を追求しているのです。

マテリアルの森の適切な管理とは
尾根林 / 毎日行っているモニタリング活動 / 供給する間伐材 / 水土・生態系保全区域として残した天然生林 早来山林 / 本社食堂のビッグテーブル / スイスの森林管理者を招聘した森づくり研修

木材の安定供給で社会に貢献

 三菱マテリアルは、資源循環利用区域や天然生林択伐利用区域を中心に年間約1万㎥の木材を生産。建築用材から木質バイオマス燃料まで、あらゆる原料として社会に供給し、循環型社会の構築に貢献しています。

 人工林施業を行う資源循環利用区域では、針葉樹であるスギやカラマツの木を伐り・植え・育てるという循環を維持・管理し、木材の安定供給を実現しています。今後は天然生林択伐利用区域で広葉樹の安定供給を目指しています。そのためには、森林の成長量を超えない範囲での間伐や択伐、適切な森林管理が必要ですが、天然生林は人工林に比べ、さまざまな樹種が混在しているため、その取り扱いには非常に多くの知識や技術が必要です。当社では、そうした天然生林施業に関する知見が豊富なスイスの森林管理者(フォレスター)を招聘(しょうへい)するなどし、知識力や技術力の研鑽に努めています。そして資源利用の一環として、三菱マテリアル本社には、社有林から作られたテーブルが取り入れられています。

地域の方が豊かな自然と触れ合える、楽しい森へ

 三菱マテリアルの社有林は、市民の森やトレイルランコース、キャンプ場などとして一般にも開放し、森林レクリエーションの場として親しまれています。こうした活用を通し、地域社会に貢献しているのです。

 また、植樹祭や育樹祭をはじめとする環境イベントを開催し、地域の皆様に森の大切さ、楽しさを知っていただくなど、積極的な地域への働きかけも行っています。

地域の方が豊かな自然と触れ合える、楽しい森へ
自生するクリンソウ / 大きく育ったカラマツの木 / 社有林に生息するオジロワシ

公益的機能を十分に発揮させ、サステナビリティに富んだ会社へ

 三菱マテリアルは、社有林のゾーニングにより、さまざまな公益的機能を最大限発揮する森林管理を実施しています。2015年9月1日には持続可能な森林経営への取り組みに対する第三者評価として、早来(はやきた)山林を含む北海道内の9つの山林について、新基準によるSGEC森林認証を取得しました。

 三菱マテリアルは、「人と社会と地球のために」の理念のもと、自然の恵みである資源を有効利用し、社会に提供する事業を行っています。今後も、森林を適切に管理し、地球環境の保全 に取り組むとともに、地域・社会に愛される活動を続けていきま す。

公益的機能を十分に発揮させ、サステナビリティに富んだ会社へ