伊藤 正昭(Masaaki Ito)

 INCONEL 718やWASPALOYなどの超耐熱合金は、高温環境でも比強度が低下しない特性により、ジェットエンジンの高圧圧縮・燃焼・高温排気部位に多用されている。これらの部品には、厳しい品質管理基準が適用されており、切削加工においても、高い加工精度・品位が不可欠である。

 しかし、超耐熱合金は図1に示す通り、極めて加工が難しくなるような材料特性を有している。炭素鋼の1/5 程度の熱伝導率により、切れ刃近傍の温度は1,000℃ 近くまで達するが、前述の通り材料強度は保たれるため切削抵抗が高い。また熱処理後の硬度はHRC 40以上でさらに加工硬化も生じることから、工具切れ刃のチッピングや、摩耗が早期に、発生する。

 図2に、硫黄快削鋼を100としたときの、各金属材料の切削難易度を比較した、いわゆる被削性指数を示す。おのおのの超耐熱合金はチタン合金よりも小さい値を示している。たとえば、ゼネラル・エレクトリック社が開発したニッケル基超耐熱合金として有名なRENE 41は指数10以下であり、高能率・長寿命の加工は極めて困難である。

機械技術(2020年 2月号)掲載

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